
世界を渡り歩いた店主がつくる一皿に心酔 テラスアンドミコ(中央区春吉)
初めて行くとメニューを見て戸惑うかもしれない。フィッシュアンドチップスにアーティチョークのマリネ、さらに寿司まであるとは! この多国籍かつ奇想天外なメニュー構成は、各国のミシュラン掲載レストランを渡り歩いてきた店主・久保田謙介さんだからこそ可能なのだ。
まずは「前菜3種(2人前1300円)」を頼む。繊細なバランスを保った立体的なカルパッチョ、カナッペ、野菜のロールに舌鼓を打ちつつ聞いてみた。どうして海外で修業を?
「最初は親不孝通り近くのカフェで働いていたんです。ある日、担々麺を開発して出したら、ものすごい行列ができるようになって。カフェなのに担々麺を作り続ける日々に『このままじゃいけない、もっと料理の基礎を学びたい』と思ったのがきっかけです。
どうせ行くならミシュラン掲載店で修業をしようと20代でイギリスに行き、フィッシュアンドチップス屋の2階に下宿しました」
なるほど、と本場仕込みの「フィッシュアンドチップス(1500円)」をオーダーする。フィッシュフライにビネガーをたっぷりとかけていただくのがイギリス流だ。サックリとした衣がたまらなく香ばしい。
「海外には8年いました。有名なレストランだとZumaやNOBU、呼ばれたらフランスでもモナコでも、香港でも働きました。だから、僕の料理は全部“どこかの国で学んだ何か”なんです」
柚子やワサビのペースト、土佐酢のジュレを使った「握り3種(980円)」は日本人の発想にはないあでやかさだ。醤油もそのまま使うのではなくペーストにして新鮮な風味をもたらしている。
また、柑橘類の合わせ方が抜群の「ハンガリー産合鴨のグリル(1650円)」は鮮やかなビーツのソースが目に楽しい。海外が目に浮かぶような料理がTelas&micoらしさとなっている。
ただ、20代の頃から変わらないところがある。新たに生み出すメニューに熱烈なファンがつくのだ。
ある時はラム肉がどんと乗ったカレー「ラムコフタ」ばかりをつくり続けることになり、ある時は期間限定メニューのパクチーラーメンを期間延長して出し続けることになった。それもこれも、「最近、すごいラー油をつくったんですよ。食べてみます?」とにやりと笑う、久保田さんの飽くなき探求心のせいだろう。
次のヒットはなんだろうか。動向から目が離せないでいる。
ライター・エディター
福岡市で活動するライター・エディター。県内60店以上でカレーを食し、出張となればカレー屋を探し、ふつか酔いにも風邪にもカレーが効くと信じている。ほとんど毎晩飲んで過ごし、心惹かれるつまみは炙りもの、燻しもの、漬物。
■店舗情報
店名 | テラスアンドミコ(Telas & mico) |
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ジャンル | ダイニングバー |
TEL | 092-731-4917 |
住所 | 福岡県福岡市中央区春吉2-1-16 |
交通手段 | 渡辺通駅から435m |
営業時間 | 19:00~翌2:00 |
定休日 | 月曜 |
