
死ぬときは「ひみつの唐揚げ」と一緒がいい! とり吉(南区大橋)
私は遺書をときどき書き換えている。
死にたい願望があるわけではない。
万が一何かあったときのために、念には念を入れて用意しているのだ。
なぜ書き換えるのか――。
それは「棺に一緒に入れてほしい食べもの」がときどき変わるからだ。
炊きたての白米であったり、つきたてのお餅であったり、チーズケーキであったり、某コンビニのシュークリームであったり、そのとき出会った「最高においしいもの」を、棺には入れてほしいのだ。
誰だって、天に召されるときは好きな食べものと一緒が良いに決まっている。
そんなわけで「これぞ!」と思った食べものを見つけるたびに遺書を書き換えているわけだけれど、ここ数年、私の遺書は更新されていない。
なぜならこれを超えるものに出会っていないからだ。
それは、唐揚げ。
「なんだ、お前、また唐揚げかよ」とあなどってもらっちゃぁ困ります、奥さん。
ただの唐揚げを棺に入れられたら化けて枕元に立ちますよ。
私が棺に入れてほしいのは南区大橋でしか買えない「ひみつの唐揚げ」だ。
かしわのとり吉
大橋駅から徒歩3分。
「からあげ」が店名よりも大きい。唐揚げに対する並々ならぬ愛を感じる。
店内のショーケースには鶏のあらゆる部位が並ぶ。結構お買い得。
でもね、ここに目をくれている心の余裕はない。
だってもう唐揚げのにおいが充満しているんだもの。
さあ、準備はいいですか?
いきますよ。
せーの、
どん!
これが、私が一緒に天に召されたい「ひみつの唐揚げ」だ!
空っぽ!
そうなのだ。
「ひみつの唐揚げ」は1日約300個売れる「とり吉」の看板商品なのだ。
私の観察によると、大体17時前後に行くと揚げたてが買えることが多い。
この日はちょうど16時50分頃に行ったら、調理の真っ最中だった。
「10分くらい待つけどよかね?」と、店主の秋山さん。
もちろん、待ちますとも。
ああ、ここにごはんがあったらにおいをおかずに何杯でも行けそうだなあと考えながら揚がるのを待った。
一体、何がひ♡み♡つ♡?
ということで手に入れました、揚げたて。
いよいよ「ひみつ」のベールがはがされる……。
さあ、準備はいいですか?
いきますよ。
せーの、
どん!
これが、私が一緒に天に召されたい「ひみつの唐揚げ」だ!
向かって右が、それだ!
(ちなみに左は普通の「もも肉の唐揚げ」)
おそらく「この2つはどう違うのだろう」という疑問がわいただろう。
正直言って、見た目は同じだ。
じゃあ何が「ひみつ」なのか。
揚げ方? 下味?
この道54年の店主の秋山さんに聞いたところ「鶏肉自体がひみつなんよ」とだけ教えてくれた。
どうやら、使っている鶏が普通の唐揚げと違うというのだ。
そのほかは一切、企業秘密。
ちなみに衣はどちらもしっかりと醤油の風味が感じられる。
下味にニンニクをガツンときかせた唐揚げが苦手なので
この醤油辛さはたまらない。ごはんがすすむ、すすむ。
観察するに、揚げ方と下味はどちらも変わらないもよう。
こちらが「ひみつの唐揚げ」(100g250円)。
こちらが「もも肉の唐揚げ」(100g230円)。
断面図。
(右:ひみつ 左:普通)
せっかくだから、ピンショットも。
しかし、下味は同じと言えど、噛みしめてみると2つの違いは明白だ。
「ひみつ」のほうが弾力があり、ずっしりと重たいのだ。
肉汁の出方も違う。
「もも肉の唐揚げ」がジュワッ……だとすると、
「ひみつの唐揚げ」はジュワァァ~ン(エコー)だ。
ここに20円の差が隠されているのだろうか……。
しかしみんな何が「ひみつ」かわからないのによく1日300個も売れるなあ。
かくいう私もその「ひみつ」にとりこまれてしまったのだけれど。
ああ、棺に一緒に入れてほしいと書いたけれど、墓前にも供えてほしいことを付け加えねば。
ところで
画面に鼻を近づけたら唐揚げのにおいがする気になるのは、私だけ?
■店舗情報

店名 | とり吉 |
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ジャンル | テイクアウト、からあげ |
TEL | 092-541-6413 |
住所 | 福岡市南区大橋1-12-13 |
交通手段 | 西鉄大橋駅から徒歩3分 |
営業時間 | 10:00~20:00 |
定休日 | 日曜、祝日 |
