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散歩のとき何か食べたくなって/「よかたい」のスパゲティサラダ 立ち呑み酒場 よかたい デイトス店(博多区博多駅デイトス)

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  2020/06/30   ※記事公開時の日付です

麗しのスパサラ

 

ある日の昼下がり、博多駅構内の名店街。その奥の酒場ゾーンにある馴染みの店のカウンターに腰を落ち着けた。

 

瓶ビールを注文し、一杯目のグラスを飲み干してふと横を見ると、二席置いた隣に、この店には珍しくモデルのような髪型と装いの若い女性が一人、物憂げな表情で透明な酒が入ったジョッキを傾けていた。

 

彼女がおもむろに手を挙げ、店員を呼んだ。

 

「瀬戸内レモンサワーのおかわりを。」

 

その一瞬、春色の風がカウンターに吹いた(ような気がした)。

 

そして、私のつまみが届いた。

 

ヱビス大瓶とスパサラ

 

その山盛りのスパゲッティサラダは、この店の隠れた名物。刻んだ魚肉ソーセージとスライスされたフレッシュオニオンがアクセントとなり、たっぷりのマヨネーズと粗挽きの黒胡椒とのバランスが絶妙で、私にとって定番のつまみとなっている。280円という価格も堪らない。

 

そして、その瞬間、彼女がこのスパサラを二度見したのを私は見逃さなかった。

 

酒場で隣人に声をかけるのは野暮なこと。彼女の視線を感じながらも、私は黙々と箸を動かしグラスを口に運んだ。

 

全てを平らげ、私が締めの一杯。糟屋郡宇美町・小林酒造本店の「萬代にごり酒」を店員に頼むと、すかさず彼女が畳みかけるようにオーダーを告げた。

 

「スパゲッティサラダを。」

 

私がしたのと同じように、彼女はスパサラに卓上のソースと一味唐辛子を親の仇のように振りかけ、一口二口食べてはさらにかけた。

 

そして、麺をすする音も気にせず、一気に皿を空にして、傍らに置いたブランド物のバッグを手に取って席を立った。

 

レジのほうから聞こえた勘定は三千円を超えていて、この店の一人客にしては高めの金額。

 

お釣りをもらって立ち去る彼女の横顔には、なんとなく吹っ切れたような明るさがあった。

 

彼女がどういう思いを抱えてこの店のカウンターに座ったのかは測り知れないが、この店のスパサラとの出会いが一つの癒しになったのなら・・・。

 

そんな感傷じみた陶酔に浸りながら、私は勘定を済ませ、散歩を再開すべく名店街の賑わいのなかへと足を向けた。

 

 

※記事の内容は取材時点のものです。

 

西山健太郎

ライター

ウイスキートーク福岡、アートフェアアジア福岡といったイベントの広報を担当するほか、独自の切り口で福岡の飲食文化・芸術文化に関する情報発信を行っている。

■店舗情報

店名 立ち呑み酒場 よかたい デイトス店
ジャンル 居酒屋
TEL 092-481-7455
住所 福岡県福岡市博多区博多駅中央街1-1 博多デイトス 1F
交通手段 JR博多駅直結
営業時間 10:00~24:00(L.O.23:30)
定休日 無休
公式HP http://kaisouken.co.jp/yokatai

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