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もうすぐ創業100年。糸島・前原にある老舗「角屋食堂」のポークチャップ定食の味 角屋食堂(糸島市前原中央)

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  2020/03/08   ※記事公開時の日付です

創業約100年の老舗食堂

いやあ、まいったな。
祖母が亡くなって、慌ただしくしているけど、
おなかは空くから何か食事をしようなんて思う。
どこで何を食べるか考えている間は、
祖母のことは考えなくて済む。

 

斎場に向かうため、筑前前原駅で列車を降りる。
ひなびた商店街を大通りのほうへ歩いていくと、
正面に大正10年ごろ創業した「角屋食堂」が見える。

大正10年、西暦だと1921年。
99年前。
亡くなった祖母が生まれたのも、90年くらい前だ。

マットのキャラクターがかわいいな!

 

店内は思ったより広くて、
テーブル席がざっと20卓くらいはある。

私のような若手には、座敷席はまだ早い。

 

おそらく80代くらいのおばあさんが一人、
手前のテーブルにぽつんと座っている。
時刻は15時半をまわったところ。
遅めの昼食か、早めの夕食かきわどい時間だ。

 

奥の小上がりの座敷席にも、男性の先客が一人。
地元の方なのだろう。
座っている後ろ姿が少し見えるだけだが、
その雰囲気から馴染みの客だと100%わかる。

 

お母さんがお茶を持ってきてくれた。
表の看板やメニュー表の表紙にも出ている
「ポークチャップ定食」を頼む。
しんとした空間に、厨房の音だけが響いている。

 

洋食もけっこうある

テイクアウトできる甘味も販売

 

先に来たのは、
テーブル席に座っていた
おばあさんの頼んだメニューだった。

うどんと、何かもう一品。
「それで、魚フライ定食もお願いね」
と言うから、内心驚いていたら、
店員のお母さんが
「魚フライお持ち帰り、いつものね」。
なるほど、これが夕飯になるわけだね。

 

座敷席の男性も、追加で「焼酎」。
「焼酎、麦をそのままでよかったね」とお母さん。
注文をとったあとで
「何も割らんでよか?」
「うん」
なんて、素っ気ないようで親しみに満ちた

やりとりをしている。
ああいいな、私もお母さんに焼酎を頼みたい。

ポークチャップ定食が来た

ごはん、味噌汁、小鉢、漬物がつく

 

「ポークチャップ定食」(1,000円)は
熱々の鉄板にのってやってくる。

バターのたっぷりきいた、甘めのソースを
フライドポテトとインゲン豆にも
ひたひたに染み込ませよう。

 

主役は一見ポークだが、
食べるうちに気づいたことに、
このメニューの最大の楽しみは
ポークに添えられているスパゲッティだ。
肉の脂とソースを含んだ麺は、白ごはんに最高に合う。

 

スパゲッティをちびちびと

 

ぬるくなった鉄板に残るソースを、
拭き取るようにパスタに絡めて食べる愉悦。
少しの間、祖母のことは忘れていた。

 

親類が亡くなっても
ひどい失恋をしていても、
それでも食事の時間というものは大切で、尊い。

 

悲しみは、遅れてやってくることがある。
いつかの二日酔いのように、
忘れたころに私の体を
すっぽりと包んでしまう。

 

甘辛いポークチャップのソースの味は
きっとしばらく、忘れられない。

※記事の内容は取材時点のものです。

安永真由

ライター/ディレクター

ラーメンやうどんなど麺類を愛する。ほかにはカレー/卵料理/純喫茶/洋食/古い店/お酒全般。辛いものを食べるときは汗だくになります。

 

■店舗情報

店名 角屋食堂
ジャンル 定食、うどん、そば、丼物
TEL 092-322-2214
住所 福岡県糸島市前原中央3-20-1
交通手段 JR筑肥線筑前前原駅より徒歩約5分
営業時間 10:00~20:00
定休日 月2回日曜日を不定休

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