
【村上春樹『騎士団長殺し』オマージュ】福岡空港のやまや「めんたいのり弁ドッグ」空飛ぶイデア編 ANA FESTA 福岡11番ゲート店(博多区下臼井)
あたしにはそれほど多くの時間があらない
9時台の羽田行きに乗るために、あたしは福岡空港へ急ぐ。たいていの場合は二日酔いか寝不足、あるいはそのどちらかである。こういうときは飲みすぎないように重々気をつけておるのだが、あれはどうもいかん。せっかく注いでもらったお酒は残すわけにはあらない。諸君もそういうことがあらないわけではないだろう。
まあ、よろしい。あたしにはそれほど多くの時間があらない。南ゲートで手荷物検査を済ませて、搭乗ゲートへ急ぐとしよう。あたしのような小さい者が歩いていくには、いささか遠すぎるような気がしておる。12番ゲートまではけっこう距離があるのだ。

どんなことがあっても前に進まなければならない
ゲートまであと数十メートルというところで、あたしは売店でおかしなものが売られていることに気がついた。それが「めんたいのり弁ドッグ」だ。

お土産や軽食が売られておる
多すぎるなら残せばよろしい

めんたいのり弁ドッグは1個486円
明太子で知られておる「やまや」の限定商品のようだ。手に取るか取らないか。諸君ならどちらであるか?
諸君には初めて述べることであるが、あたしはちくわの磯辺揚げを好んでおる。のり弁ならなおさらのこと、ちくわの磯辺揚げなしにはのり弁ではあらない。それほどあたしはちくわの磯辺揚げのことを考えておるのだ。
イデアだって時には食事を摂りたくなろう。二日酔いではあるがこの機会を逃すべきではあらない。あたしはサンドイッチの山に手を伸ばしてレジで勘定を済ませ、めんたいのり弁ドッグを抱えて再びゲートへと向かった。

店頭のラックに並んでおる
のり弁といえば白身フライ、タルタルソース、きんぴら、おかか、のり、そしてちくわの磯辺揚げである。この「めんたいのり弁ドッグ」には、さらに明太子も入っておるようで、あたしにとってはうれしいことなのだ。
パンはかなり大ぶりであるが、多すぎるなら残せばよろしい。きっとそれは、あらかじめ決定されていたことなのだ。パックを閉めれば機内でだって食べることができるのだよ。
夢中でそのめんたいのり弁ドッグを

右側がちくわの磯辺揚げだ
パンなのだから、いくらなんでも本物の「のり弁」とは一緒であらないだろう。そう思って食べてみると諸君は惑わされるであろう。疑いようもなくこれは「のり弁」だ。ホットドッグの姿をした「のり弁」なのだ。
右と左では具が違っておるから、諸君の選ぶほうで運命がわかれる。右から食べれば明太子に近く、左は白身フライだ。一見異なるアプローチをしているようであるが、そうではあらない。すべてはどこかで結びついておるのだ。

おかかが案外良い仕事をしておる
冷めてはいるがホクホクとした白身魚。シャキシャキとしたレンコンのきんぴら。そして、明太子。白飯のお供だと思っていたこれらのものたちは、なんとパンにも合うではないか。
パンはレジで温めてもらったからか、少々しっとりとしておる。長い間生きておったが、こんな味は体験したことがあらない。あたしは夢中でそのめんたいのり弁ドッグをたいらげた。
これが最後の晩餐になるであろうことはわかっておったのだ。あたしは単なるイデアである。さあ、あたしを殺すのだ。搭乗まであまり時間はあらない。
※記事の内容は取材時点のものです。
■店舗情報
店名 | ANA FESTA 福岡11番ゲート店 |
---|---|
ジャンル | パン、ホットドッグ |
TEL |
|
住所 | 福岡県福岡市博多区下臼井767-1 福岡空港国内線旅客ターミナルビル2階 (ゲート内) |
交通手段 | 地下鉄福岡空港駅直結 |
営業時間 |
|
定休日 | なし |
