旅行や日々のグルメ探訪に!ライターが自腹で本気レビューする福岡のレストラン情報

本場タイ料理のクオリティを凌駕する凄腕日本人シェフ BANDAR(バンダル)(中央区大宮)

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  2018/10/02   ※記事公開時の日付です

タイ・セレクト福岡第1号の栄誉に輝いたお店

タイ国政府が認定する優れたタイ料理店にのみ与えられる称号「タイ・セレクト(URL)」。福岡県内では、現在、9店舗(2018年9月現在)が認められ、近年のエスニック・ブームもあって、活況に拍車がかかっています。

その中で福岡第1号の認定を勝ち得たお店「BANDAR(バンダル)」(福岡市中央区大宮)は、タイ生まれ・タイ育ちの日本人シェフという異色のご店主が切り盛りする人気店。

タイ料理レストラン BANDAR(バンダル)外観

客席は2階のみ

小ぶりな一軒家のような外観と、穏やかにたなびくタイ国旗が目を引く店舗は、ひと度足を踏み入れれば、瞬く間に本場さながらのオリエンタルな空気感に身を包まれます。

客席は階段で上がった2階部分にあり、カウンター席としても使えそうな長机タイプの資料スペースを除くと、2名テーブル3卓と4名テーブル1卓、そして4名個室のみ。思った以上にコンパクトな空間設計です。

タイ料理レストラン BANDAR(バンダル)内観

本場のオーラは料理だけじゃなく!?

店内観察も程々に、夜のオーダーストップ間際に滑り込みで席に着くと、オーナーシェフの木原さん自らメニューを携えて1階の厨房から上がって来られます。ご自身もよく間違えられるとのご経験談を公式で仰っているので、敢えて書かせて頂くと、第一印象はまさしく”タイ現地の方”。ここまで異国のオーラをまとった方も珍しいなという強烈なインパクトと同時に、本場の味への期待感はいやが上にも高まります。

タイ料理レストラン BANDAR(バンダル)「木原オーナーシェフ」(出典:公式サイト)

タイ料理の魅力を幅広く堪能できるメニュー構成

メニューを眺めると、数あるタイ料理の中でも、肉・海鮮・スープ・カレー・飯もの・麺ものといったカテゴリごとに厳選(辛いメニューは唐辛子マークの数で三段階表示)されていて、どれも一度は味見してみたくなるものばかり。

伺った当日は、ドが付く定番ではありますが、お店の方向性を素直に感じるべく、シンプルな「空芯菜炒め」「チキングリーンカレー」「トムヤム麺」をチョイス。ポーションも2名以上でシェアするのに十分な量で、どれもリーズナブルに感じられる価格設定です。

タイ料理レストラン BANDAR(バンダル)「空芯菜炒め」

予想外、いや予想以上の味わいに驚かされる

口に入れた瞬間に感じられるのが全体的な味の「まろみ」。いわゆるエスニック料理を食べる際の身構えてしまうようなクセの強い香味や辛味も控えめで、極めて食べやすい味付け。

タイ料理レストラン BANDAR(バンダル)「チキン・グリーンカレー」

全ての味の要素が高い次元でまとめられている

ともすれば「上品な味」と揶揄されかねない繊細さに驚きながらも、その深みのある味わいは、本場に劣らぬ十分な満足感。塩加減、酸味、旨味、香味などの味の要素がどれも引き立つ高いレベルでまとめられています。

(余談ですが、今や福岡でも市民権を得た女子ウケ好調なパクチーが、風味付けに適量が使用されているのも好印象です。最近流行りのパクチー大盛りのような極端な使い方は本場タイではされていません。)

タイ料理レストラン BANDAR(バンダル)「トムヤム麺」

「食べやすい=日本人向けアレンジ」は本当か

しかしながら、こういう味に出会った時に陥りやすいのが、「ああ、、日本人向けに食べやすくアレンジされているんだ、本場とは違うね」という消極的な考え方。真の美味しさを曲げて行き着いた”妥協の産物”と見なしてバッサリと斬る方も中には居ることでしょう。もし、あなたがそういう発想に至ったら、ぜひこうも考えてみて下さい。

いわゆる「本場」という言葉が持つ意味は、あくまで”現地(風)”であるというだけで、”より美味しい”ことと同義ではありません。言うなれば、各国独自の食文化が織りなす記号的な(=分かりやすい)料理体系を画一的に”本場”と呼んでいるに過ぎません。

確かに、際立った極端な味付けが「分かりやすい」とは言えますが、仮にファッションの世界に置き換えれば、もしも色の選択肢に原色系しか無いとしたら、世の中の服飾デザインは押しなべて大味になることは想像に難くないことでしょう。その意味で、このお店は、記号的に捉えられやすいエスニック料理にも”中間色としての機微”があることを、その繊細な調理・調味を通じて訴えかけてきます。

純粋な”美味しさ”を求めて

BANDAR(バンダル)で提供されているのは、日本人の繊細な味覚にも耐えうる言わば”進化した”タイ料理。それを味わえるお店と凄腕シェフに出会えた幸せを噛み締めつつ、気がつけば、本場の味を求めて来店したことさえも筆者は忘れてしまっていました。

ぜひ、「タイ料理とはこういうもの」という先入観やこだわりを捨てて、一度「美味しい料理」を食べに行って頂きたい珠玉のグルメ店です!

フジワラコウ

フードアナリスト・ワインエキスパート

食の世界の奥深さに魅せられ、県内外をオールジャンルで食べ歩くこと正味1,000軒以上。福岡の食文化振興に貢献すべく独自の情報発信を続けている。座右の銘は「神は細部に宿る」。『ファンファン福岡WEB』で「Fの饗宴」連載中

 

■店舗情報

店名 タイ料理レストラン BANDAR(バンダル)
ジャンル タイ料理
TEL 092–521–5216
住所 福岡市中央区大宮2-1-21
交通手段 西鉄平尾駅から徒歩5分
営業時間 昼11:30~14:30 / 夜17:30~23:00
定休日 水曜日

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