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知る人ぞ知る名物、新天町・釜めしビクトリアの癒やしの「ソップがけ」を求めて 釜めしビクトリア(中央区天神)

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  2019/05/25   ※記事公開時の日付です

体に良いもの

体調がすぐれないからと言って何も食べないのでは余計に体に良くないと思うのだが、それでもなかなか食欲が出ない。そんなときでも救いがあるとしたら、それは「釜めしビクトリア」のアレしかないと思っている。

 

お気づきの方がいるかもしれないが、アレとは、なにを隠そう「ソップがけ」のことである。

 

「ソップがけ」のことを思うやいなや、頭のなかはたちまちソップでいっぱいになる。とりスープとりスープとりスープとりスープ。まだお店にも行っていないのに、私の舌の上にはあの淡白か濃厚かわからなくなるような、塩気が効いたソップの味がじわじわと広がってきて止められない。

落ち着いた店内

1階と2階に客席があり、ゆったりと座れる

 

迷いなくお店に入り、1階のテーブル席に腰を下ろす。古い洋風のレストランのしつらえに合った、落ち着いた年齢層のお客が、点々と座ってそれぞれに食事を楽しんでいる様子が実にしみじみとしている。

 

隣の一人客の女性はおそらく70代か80代。注文は鮭の釜めしのランチセットAだ。セットのグリーンサラダが運ばれてきたばかりで、黙々と野菜をほおばっている。

 

奥の女性2人連れは、もう少し若い。若いといっても50~60代で、その年齢の女性を「若い」と表現していいのかどうなのか。しかし「若くはない」とは言い切れない歯切れのわるさが残るが、とにかく店内では比較的若い。食事はすでに終わっているが、おしゃべりに夢中で時々込み入った話をしているようだった。

 

言わずもがな、スタッフを除くとこの空間では私が最年少だ。今日は体の声を聞いて「ソップがけ」と心に決めているが、元気があれば、ランチセットAの味噌汁がソップに変わるランチセットBを頼んでみたい。

 

釜めしでは「かつ」や「すきやき」が目に入るが、それではまだまだ子どもに等しい。「『しいたけ』と無心で注文できるようになったら本当の大人なんだろう」なんてメニュー表と周囲のおばさまたちを見ながら考えて「ソップがけ」を待つ。

 

そうこうしているうちに、「ソップがけ」の準備が始まった。

「準備」と聞くとこちらも少し身構えて、気合が入る。釜めしを食べる行為は、儀式に参加するのと同じなのだ。

ソップがきた

 

そしてついに、釜めしがやってきた。
いや、ソップがやってきた。

 

ソップがけは930円

 

私の目当てはこの「ソップ」以外にない。この丸くずんぐりとした急須には、たっぷりとあのソップが入っているのだ。

 

ソップ!

 

釜めしの蓋を開ける前に、丼にソップを注ぐ。

味見程度のつもりが……

 

ソップは半透明で無味のように見えるが、れんげでひと口すすると目が覚めるような味わいが広がる。最初は塩気が立つが、口の中で転がすように味わっていると、鶏の旨味がしっかりと感じられる。それでいてべったりとはせず、スッと切れよく旨さが残る。

 

ああ、これこれ。

れんげでソップをすくう手が止まらない。あっという間にコップ1杯ぶんのソップを飲み干してしまった。このままではご飯を食べないうちにソップがなくなってしまうので、いけないと思って釜めしの蓋を開ける。

 

ごはんはたっぷりとある

 

ほくほくと湯気が上がる、炊きたての白飯。米の粒がふっくらとして、きらきらと輝いているではないか! 今度はソップをかけず、白飯だけを味わってみてもちょっぴり焦げの香りがしてまた旨い。

 

「ソップがけ」は奄美大島の郷土料理「鶏飯」をヒントに作られている。焼きほぐされた鶏のささみに、大葉、高等ねぎ、紅生姜、わさび。これらの具を好みでのせて、ソップをかけて味わうのが本来の食べ方だ。

薬味を少しずつ

 

こうしてお茶漬けのようにソップを注ぐ。

急須からソップ

 

それに習って食べてはみるが、やはりソップばかりを飲んでしまう。いろいろと試してみた結果、いちばん良いと思ったのはささみと米、ソップのシンプルな組み合わせだった。

 

しばらく浸しておくのがおすすめ

 

むしろ、ささみさえもなくていいかもしれない。ビクトリアのソップは、それくらい味わい深い。

 

ソップはおかわりできるので、途中でおかわりをお願いした。あとで聞いたのだが、昔からこの店のことを知っている元木さんはソップを2回おかわりしたことがあって、そのときはスタッフの女性に「本当は2回目はだめなんだけどね」と言われたことがあるらしい。なんだかいけない秘密を共有するようでうらやましい気もする一方、私は心のなかで「おかわりは1回にしておいて良かった」とほっとした。

 

話は戻って、ソップのことだ。

おかわりのソップが来たので、これで安心して思う存分ソップを使うことができる。しかし、見方を変えれば、このソップで残りのご飯を楽しむためには、うまく考えながらソップを配分する必要がある。カレーを食べるのと同じ問題に直面するのだ。

 

私は急須の蓋を開けて、残りのソップの量を確認する。
ソップはまだ残っている! 急を傾けて確認したから間違いないだろう。

 

最後のひとくちはソップにしたいから、ご飯と具、それからお新香も早く食べてしまおう。その後の最後のソップはまた格別だ。これだけ飲んでも飽きない、やさしいソップ。心が満たされて、体も少し軽くなった気がした。

 

このマークで「ビクトリア」とピンと来た人はかなりのツウ

 

※記事の内容は取材時点のものです。

安永真由

ライター/ディレクター

ラーメンやうどんなど麺類を愛する。ほかにはカレー/卵料理/純喫茶/洋食/古い店/お酒全般。辛いものを食べるときは汗だくになります。

 

 

■店舗情報

店名 釜めし ビクトリア
ジャンル 釜めし、和食
TEL 092-771-4081
住所 福岡市中央区天神2-7-144 新天町商店街内
交通手段 西鉄福岡(天神)駅より徒歩5分
営業時間 11:00~20:30
定休日 なし

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