
【文豪シリーズ】もしも『カラーブックス博多の味』著者の帯谷瑛之介が3月29日で閉店する「戸隠そば」へ行ったら 戸隠そば(福岡市・天神)
ライター事務所をざわつかせた一冊
昭和53年に発行された
『カラーブックス 博多の味』

表紙は「どんたく」を背景にした「水炊き」
執筆者は帯谷瑛之介(おびや・えいのすけ)さん。

1916年生まれ。肩書きがすごい
この本には帯谷さんがオススメする
90軒以上の福岡の飲食店情報が載っています。
発行から40年が経った今となっては
掲載店の半数以上が閉店していますが
「釜飯ビクトリア」や「かろのうろん」
「メキシコ料理 ロシータ」など
今でも愛され続けている
名店が紹介されています。
40年前の情報が読める
という点も楽しいのですが
何より、帯谷さんの文体が独特で
惹きつけられてしまうのです。
事実、ベテランライターのくりしん師匠が
実録グルメドラマ「チャーハン放浪記」VOL.3 卵は生きているか!?
を執筆するときに
「彼の文体を意識せずにはいられなかった」
とコメントを残していたのですから。
今回は、私たちクイッターズライター陣を魅了した
帯谷さんのスタイルをイメージして
創業50年以上の老舗「戸隠そば」を紹介します。
福ビル地下の老舗そば店
常識を知らないと恥をかく。
恥をかくどころか昼飯にありつけない。
そんな経験をしかねないのがこの店だ。
まず、注文方法である。
一人客であることを告げ
隅のカウンター席に座るも
メニュー表が出てくることはない。
茶を運ぶ女性に声をかけるが
「食券は?」とぞんざいに尋ねられ
出そうとした茶を引っ込められる。
慌てて入口へ戻ると
レジ台に色とりどりの食券が並び、
こちらには陽気そうな女性が立っている。

一枚一枚、番号が振られた券。納得
券を見て選ぶのは簡単ではない。
表へ出てショーケースを眺めるのが良いだろう。

そば・うどんならたいていそろっている
再び、レジ台の隣に立つが
先ほどの陽気な女性は
常連客とやり取りをしている。
「あの貼り紙はなんだ」
「次は決まっていないのか」
と話し込んでいる。
常連客はがっかりしている様子だ。
会話が終わった頃に
注文を告げて支払いを済ませる。
「とり南うどん」と「ミニ玉子丼」
980円であった。
スピードアップされている
「郷に入っては郷に従え」ということわざがあるが
この店はまさにそれである。
厨房付近のおっかさんに食券を渡すが
受け取ってはもらえない。
担当が違うのであろう。

席について茶を受け取った後で食券を渡さなくてはいけない
盆にのった丼が運ばれる。

この眺めもごちそうの一つ
左が「ミニ玉子丼」である。
この「ミニ」というのが、うれしい。
うどんだけでは物足りないが
うどんと丼を一つずつ食べるには胃袋が足りない。
そんな客の事情を分かってか
用意されているのが「ミニ」なのだ。

こうして見るとそれほどミニではない
七味は一人につき一つ。

気前がいい
かけ放題とは、ありがたい。
デラックスである。

鳥はムネ肉。ネギは薄切り

唇で切れるくらいのやわ麺

味付けは甘め。七味をかけるとバランスがいい
天神再開発とともに
出汁がうまい。
やわ麺は博多っ子にうれしい。
接客はスピードアップされ、とてもいい。
また近々、訪れたいと
思ったところだったが。

「天神再開発に伴い、三月二十九日に閉店」
常連客ががっかりしていた理由である。
閉店前に訪れたことは幸運であったが、
オールドファンには残念であろう。
閉店が惜しまれる店。

名物は信州の味「戸隠そば」
■店舗情報

店名 | 戸隠そば |
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ジャンル | うどん、そば |
TEL | 092-721-8374 |
住所 | 福岡市中央区天神1-11-17 福岡ビル地下1階 |
交通手段 | 西鉄天神駅より徒歩4分 |
営業時間 | 11:00〜19:50 |
定休日 | なし※2019年3月29日で閉店 |
