旅行や日々のグルメ探訪に!ライターが自腹で本気レビューする福岡のレストラン情報

年に一度、FUKUOKA に舞い降りる”本場フランス2つ星” イベント会場:ホテル・ニューオータニ福岡「カステリアン・ルーム」(中央区渡辺通)

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  2019/01/21   ※記事公開時の日付です

日本人だけで世界レベルのフレンチに挑む

 

浜野雅文氏 凱旋フェア イメージ

 

フランスのボージョレ地区にある人口500人弱の小さな村サン=タムール=ベルヴュ。風光明媚なAOCワイン産地の一角に、日本人スタッフだけの”フレンチレストラン”で、しかもミシュラン2つ星(2018年)を獲得するという快挙を成し遂げたお店「Au 14 Fevrier Saint-Amour Bellevue(オー・キャトルズ・フェブリエ・サン=タムール=ベルヴュ)」はあります。

 

フレンチに”和”のエッセンスを取り入れたその独自の世界観と完成度の高さは、”日本とフランスの融合料理”とも讃えられ、美食の国フランスのグルマンたちの貪欲な味覚と心をとらえて放しません。それどころか、今なお、更なる高みを目指して日々進化を続けています。

 

サン=タムール=ベルヴュ イメージ

味わえるのは国内で「福岡」だけ!

今回、ご紹介するのは、同レストランのオーナーシェフである浜野雅文氏が、福岡県糸島市出身というご縁から、地元のホテルニューオータニ福岡で、年に一度、1月に開催されている期間限定(※)の「浜野雅文凱旋フェア」。例年、同氏の洗練されたフランス料理を味わうべく、県内外から極めて多くの来場者が訪れる一大イベントです。
※2019年は1月12、13、14日の3日間(実施済み)

 

会場は、同ホテル地下のレストラン「カステリアン・ルーム」。重厚なレンガ造りのアーチ状エントランスを潜ると、眼前に広がるのは、漆喰塗りの表情豊かな白壁とクラシックな風合いが美しい家具や調度品たち。中世ヨーロッパを思わせるその落ち着いた空間やサービスマンのそつが無くしなやか動きは見るからに品位に溢れ、期待感はいやが上にも高まります。

 

カステリアン・ルーム 入り口

心奪われる世界基準のサービス精神

着席直後のサプライズは、浜野シェフ直々のお出迎え&ご挨拶。優れた飲食店が、料理の良し悪しだけでなく、お客様の”心を満足させる”ことを重要視しているのが直に伝わってくる瞬間です。100席近い大箱が来場者でひしめく中にも、このさり気ない”おもてなしの心配り”が目に見えない余韻となって、退店まで小さく長く琴線を揺らし続けます。

 

フェアは昼と夜の二部制。糸島の食材を活かしたおまかせコース11,000円と15,000円(税・サ別)の二種類が用意され(※2019年)、希望するボリュームや予算に合わせて選べるようになっています。価格の違いは、一部メニューが省略・追加されるといった画一的なものではなく、内容や構成とも、それぞれコースごとに完結したアレンジが成されているのも嬉しい配慮。また、それらお料理とのマリアージュを謳うアルコールorノンアルコールのペアリングメニューも各種用意されています。
※以下、写真は15,000円コースのもの。

 

 

 

またたく間に”浜野ワールド”に惹き込まれる

シャンパーニュで軽く乾杯を済ませ、周囲のテーブルをそわそわと見回しながら最初の料理を心待ちにしていると、予想外の展開が待っていました。ほどなくして眼の前に並べられたアミューズは、料理と呼ぶよりは、”物語の断片”とでも言うべきもの。まるでメルヘンの世界に予期せず足を踏み入れたような心地よい錯覚に囚われます。

 

しかし、同時にどこか牧歌的で暖かな印象も受けるのは、フェアのテーマにもなっている「糸島」の原風景が心の中で重なるからでしょうか。ともあれ、ものの1皿目から、浜野シェフの世界観によって食べ手の心のキャンバスが支配され、一枚の絵画として徐々に描き出されていく不思議な快感が沸き起こり始めます。

 

アミューズその1

アミューズその2

アミューズその3

めくるめくアーティスティックな料理の連続

そこから次々と出される料理の数々も、味や香りの良さに留まらず、色彩や立体感といった造形美が素晴らしく、絵画の世界に置き換えてみれば、どこか印象派のようで、また時には抽象派のようでもあり、シェフの芸術センスや調理技術の引き出しの多さには感嘆させられます。伝統的なフレンチの良さを踏襲しつつ、モダンなエスプリを効かせた正に”浜野流”と呼べるもの。

 

料理テーマ「新春の宴の始まりを告げる3つのプレリュード」

料理テーマ「白雪」

料理テーマ「海と大地の歌声」

料理テーマ「FAKE Version 2」

シェフの人格さえ垣間見えるハートフルな料理

特にエスプーマ(泡)を効果的に活用したソース類は見た目にも食感的にも面白く、食べ手を飽きさせないための工夫として随所に見られます。また、詳細はここでは控えますが、時折、思わず顔がほころぶような”遊び心”が見え隠れする点などには、シェフの朗らかなお人柄を思わずにはおれません。

 

料理テーマ「漆黒」

料理テーマ「Vive la France!」

料理テーマ「冬茜」

デセールテーマ「儚き月夜」

デセールテーマ「華の舞」

デセールテーマ「華の舞」2

他に代えられない”唯一無二”の満足感

レストランにおける顧客満足度を考える時、その紡ぎ方はお店ごとに異なるものです。味を追求する店、サービスに注力する店、個性的なアプローチを試みる店等々。

浜野シェフが魅せるのは、美味しさを大前提として、料理以上の”体験”を一皿一皿に凝縮していき、それを一遍の物語として繋ぎ合わせた独自の世界観です。そこに惹き込まれた者は、料理を通じて氏の人柄に触れ、他に代えられない”唯一無二”の満足感を得ることになります。それほどに料理とは造り手の想いを代弁するものです。言い換えれば、料理とは「人」そのものであると言えるのかもしれません

 

 

────── 振り返れば、そんな食の深い世界を意識させられるユニークな体験が”1脚のテーブル”の上に集約された愛しい4時間半でした。

 

フジワラコウ

フードアナリスト・ワインエキスパート

食の世界の奥深さに魅せられ、県内外をオールジャンルで食べ歩くこと正味1,000軒以上。福岡の食文化振興に貢献すべく独自の情報発信を続けている。座右の銘は「神は細部に宿る」。『ファンファン福岡WEB』で「Fの饗宴」連載中

 

■店舗情報

店名(イベント会場) ホテル・ニューオータニ福岡「カステリアン・ルーム」
ジャンル フランス料理
TEL 092-715-2006
住所
交通手段
・JR博多駅 車7分
・地下鉄 渡辺通1丁目下車すぐ
・西鉄バス渡辺通1丁目下車すぐ
・西鉄天神大牟田線薬院駅 徒歩5分
・渡辺通駅から145m
営業時間 要問合せ
開催日程 例年1月に開催(要問合せ)

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