
「お目が高い!」と思わずうなる、連夜満席の日本酒専門居酒屋 目利きのたか志(博多区店屋町)
「居酒屋」と言っていいのでしょうか。
客層と、雰囲気は明らかに居酒屋です。
メニューにはお造りや牛すじ煮込み、豚角煮串カツなど
慣れ親しんだ料理名が書かれています。
価格で言えば、ほとんどが上質な居酒屋の価格帯。
ただ、中には「毛ガニジュレ掛け」(6800円)もあるのです。
メニューが5ページにもわたる日本酒は、
650円からあり、こちらも手頃な銘柄がほとんど。
それだけでなく、1升16万円の黒龍も置いている。
それが冷泉公園近くにある、
日本酒専門居酒屋「目利きのたか志」です。
サラリーマンが実に幸せそうに酒を飲んでいる

満席だった火曜日。年内の週末は埋まっていることもあるので予約を取った方がいいそうですよ。
入店してまず驚いたのはサラリーマン率の高さでした。
30席ほどはある店内は火曜日といえど満席で、
女性は私たちを含めて5人だけ。
あとは30~50代のスーツの男性グループが
「わはは!」「わははははー!」と
実に楽しそうにあちこちで大笑いしていました。
行ったタイミングがたまたまだったのかもしれません。
ただ、

一人分ずつ席に和紙がひかれ、箸がセットしてある。

さらに、カウンター前には常に美しく拭き上げられた板場がある。
そういう一見高級そうな店がサラリーマンに愛されているのです。
おいしいものが納得の価格で気軽に味わえる。
そう、お客さんが証明しているような気がして。
お通しが会席料理の一品のよう

胡麻豆腐のあられ揚げ。
まずお通しとして出されたのは、胡麻豆腐のあられ揚げ。
お通しといえど、日本料理のコースの中に出てきても
おかしくない、一品でした。
プチプチの食感が楽しいあられに包まれた胡麻豆腐は
もっちりとした食感でごまの味わいが豊か。
あんはかつおのダシと醤油の風味が強く、やや濃い味に
仕上げられているのでお酒に、日本酒にぴったりなのです。
もう、今日はおいしい予感しかしません。
日本酒にとにかく合う一品料理

造り盛 5種(1480円)
やりいか、シマアジ、あら、マグロ、サワラの5種盛りは
一つひとつ産地を教えていただいたのですが、
失念してしまいました。ただ、九州だけでなく、
全国あちらこちらから仕入れていたので
その時、最も質の良い場所から仕入れていらっしゃるのでしょう。
すりたてのワサビもツンツンしすぎない良い風味でした。

たい味噌(480円)
茶漬けで頼もうとしていましたが
たまたまごはんが切れてしまっていたので
たい味噌を単品で。
これは、まず間違いなく、毎度頼みたいメニューです。
軽く炙られた甘めの味噌に鯛がぎっしり。
鯛、酒、鯛、酒の無限ループに陥りました。

クリームチーズ酒粕漬け(380円)
これはいかん。日本酒をどんどん飲んでしまうアテです。
酒粕の塩梅が丁度良く、鼻先をかすめるように消えていく。
しかも、そのままと炙ったものの2種を比べられる。
ああ、どちらも好きです。

ということで日本酒を。
日本酒メニューは先ほど紹介した通り
全国津々浦々から取りそろえてあります。
30種以上あり、なかには入手困難な貴重な銘柄や
極上の一品も。ぬる燗におすすめなのはこれ、
辛口なのはこれ、と紹介されているので
頼みやすかったです。
嬉しいのは、日本酒とともにお水を頼むと、
日本酒を仕込んでいる「仕込み水」を持ってきてくださったこと。
日本酒にこだわるからこそ水も、という心意気が伝わってきます。

ちょいとこぼすのが良いですね。

長崎長崎芳寿豚 バラあぶり レモンと塩で(1280円)
レアで食べられる究極の豚、市場に出回らない貴重種
とメニューにあり、頼んだ「長崎芳寿豚」。
脂が甘いんです。そしてさらっとしている。
旨味がじわっとしみだしてくる。
豚ってこんなに優しいんですね。

エビ芋の唐揚げ(780円)
人気1位のこちらは、旬の時期にしかないメニュー。
味わいは想像のはるか上を越えていきました。
カリッとした衣とねっとりしたエビ芋の
食感の対比もおもしろいのですが、何よりディップ。
唐揚げに付けるのは、
比内地鶏のミンチとレバーを使ったペーストだったのです。
芋にペーストをのせて味わうと、
ふわっとレバーの風味が香り、
ねっとりエビ芋に、ねっとりペーストが応戦。
二つが一つに溶けてまろやかに消えていきます。
思い出したらまた食べたい。
1月~2月半ばまではあるそうですよ。
お店に“たか志”さんは、いない
ところでたか志さんは、どなたなんでしょう?と
ずっと板場にいらっしゃる、年は50代後半くらいの
白衣が凜々しいおじさまに聞いてみました。
てっきり、この方が料理長であり、店主であり、たか志さんだと
思っていたのです。

鮮魚を扱う手さばきが美しくて見とれました。
しかし、返ってきた答えは
「たか志は人の名前じゃないんですよ」
高い志(こころざし)を持って食材を選び、料理をしていく、
という想いが込められているそうなんです。
そして、料理長だと思っていたおじさまは、
息子さんの店を手伝っていらっしゃるとのことでした。
なるほど、料理には一つ一つ産地が書かれ、教えてもくれ、
「どこの何を食べているんだろう……」ということが
一切ありません。
店主の息子さんは京都の日本料理店や大阪で修業されたそうです。
全国から選び抜かれた素材や酒をそろえ、「お水」にもこだわる。
気遣いがある、と短時間の滞在でもわかるのですもの。
食材や食材の扱い方、提供の仕方にも
もちろん、技術と細やかな思いやりがあるのでしょう。
で、このカジュアルさ。
気取らずに行ける身近さ。
「目利きのたか志」はやはり、居酒屋です。
日本料理の技術と心意気を持ち、
居酒屋のはんてんを羽織って、
「食べて行きーよ」と言ってくれる、
そんなお店なのです。
■店舗情報
店名 | 目利きのたか志 |
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ジャンル | 居酒屋、和食 |
TEL | 092-409-3178 |
住所 | 福岡市博多区店屋町2-30 |
交通手段 | 地下鉄呉服町駅から徒歩3分、地下鉄祗園駅から徒歩6分 |
営業時間 | 17:00~24:00 |
定休日 | 日曜 |
