旅行や日々のグルメ探訪に!ライターが自腹で本気レビューする福岡のレストラン情報

もしも、村上春樹が9月にオープンした警固の「ORTO CAFE」へ行ったなら。 ORTO CAFE(中央区警固)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

  2017/09/23   ※記事公開時の日付です

ある9月の晴れた昼に100%のランチと出会うことについて

ある9月の晴れた昼、

僕は100%のランチが食べたいことに気付いた。

 

 

そんなことを言ったら君は笑うかもしれない。

 

「100%のランチだって? そんなものあるわけないさ」

 

もちろん完璧なランチなんてものは存在しない。
完璧な絶望が存在しないようにね。

 

ただ、僕にとっての100%のランチはどこかにある。

つまり、僕にとって100%であればいいわけで
誰にとっても100%であるかどうかは関係がないのだ。

 

 

時計の針は13時を指していた。

 

やれやれ、このままではランチタイムが終わってしまう。

 

キャンバス地のスニーカーを履き、コットンシャツに腕を通し

僕は100%のランチを探しに外へ出た。

クレマチス、難破船から届く信号、春のクマ

9月13日にオープンした「ORTO CAFE」はまるで
芽吹いたばかりのクレマチスの蕾のようにそこに佇んでいた。

 

 

僕は、難破船から届くかすかな信号のように微弱な記憶を探り
以前、「オルトのバター」と「オルトのパン」を食べたことを思い出した。

 

あのバターのまったりとした舌ざわりとほどよい甘さ。

 
長い冬眠を終えて起きてきたばかりのクマのように
腹を空かせていた僕は、思わず店内に足を踏み入れた。
 

入口からすぐのカウンターには

あの日と同じ、バターとパンのセットが置いてある。

 

シンプルなメニュー、ショウガスライス、哀れな喉

店内には、草食動物のように物静かな青年が一人、
ドレッシングの瓶を並べたり、皿を磨き上げたりとリズムよく仕事をこなしていた。

ランチのメニューはいたってシンプルだ。

オルトのカレー(1000円)
ポップオーバー(200円)
オルトのパン(400)
……
クロワッサンサンド(480円)
カンパーニュサンド(450円)
ライ麦食パンサンド(420円)
 

ブレッド、サンドウィッチを頼むと
サラダとスープのセットが350円で追加できる。
 
一人で食べるにはいささか多すぎるかもしれないが、
僕はカレーとカンパーニュサンドをつくってほしい、とグラスを磨く彼に頼んだ。
 

ドリンクメニューに視線を落とすと、僕はたまらなくビールが飲みたくなった。
 

やれやれ、今日が土曜日だったらどれだけよかっただろう。
 

「ハートランド」の文字に刺激された哀れな喉をなだめて、
僕は「コーディアル」を注文した。
 

そのグラスはまるで僕にこう言っているようだった。

*********
いいかい?
コーディアルというものはね、体にいいものなんだ。
だからジュースのように甘くっちゃあいけない。
とことん辛くなきゃ。
そうでなければコーディアルなんて呼んでいいはずがないんだ。
********

折り重なるショウガのスライスをストローで沈め、
僕はコーディアルを飲んだ。
 
思ったほど辛くない。それは確かだ。
 
そして、すっきりしたのどごしは乾いた僕の喉を確実に潤していった。
 

ブロッコリー、スモーキーなチキン、そして三日月のアボカド

「オルトのカレー」はビーフカレーである。


ある意味では間違っていない。
ただ、「ビーフカレー」と一言で表すには少々、乱暴すぎる。
甘さとコクがある、特別なカレーなのだ。
 
何より、たっぷりと盛られたブロコリーの存在だ。
オリーブオイルと黒コショウでしっかりと味付けされた、
ほどよくやわらかいブロッコリー。
 
カレーにはブロッコリー。
悪くない響きだ。
 

テーブルにカンパーニュサンドが登場したとき、僕はついに確信した。
 

コーディアル、カレー、カンパーニュサンド、
このセットこそが僕にとっての100%のランチだ。
 
手に取ると粉がつく、分厚いカンパーニュ、
マヨネーズとバターでこってりと
ローストされたチキンはスモーキーな香りがする。
 
三日月のように美しくカットされたアボカドは、
これ以上ないというくらいにちょうどいい熟し加減だった。
 

そうして、すべてたいらげた後に、僕はある重要なことに気づいた。
 
 
もしも、隣にかわいい女の子がいたなら
100%のランチタイムになるはずだったのだ。
 

古林咲子

はらぺこライター

いつ何時でもお腹が空いているため”はらぺこ”の名がついた。くりしん師匠にその食いっぷりを認められ、月に一度「ぶらりふとり旅」の代打を勤める。夜は“今泉の咲子”になる。

■店舗情報

店名 ORTO CAFE(オルトカフェ)
ジャンル カフェ
TEL 092-739-5110
住所 福岡市中央区警固1-15-51 1階
交通手段 西鉄天神(福岡)駅から徒歩10分
営業時間 12:00~19:00
定休日 月曜

関連記事
Related article