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満席の韓国料理店にいたポーカーフェイスのマドンナ 辛世界の真豚奈(中央区天神)

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  2017/09/16   ※記事公開時の日付です

来夢来人(らいむらいと)や歩絵夢(ぽえむ)のような
読み仮名つきの当て字店名に漂う、
どうしようもない昭和っぽさ。
少しのダサさ。
一周回っての愛しさ。
そんな店が北天神にもあった。


「辛世界の真豚奈」、しんせかいのまとんな。
チゲやタッカンマリ、ビビンバなどベーシックな
韓国料理が味わえる店だ。

おばちゃんが前のめり


「好きな席にどうぞ」
「どこでもいいよ」
「注文は伝票に書いて」
「ペンはそこね」
「書いたら呼んで」
と、韓国人のおばちゃんが短文で矢継ぎ早に伝えて、
さっと奥へ行ってしまう。この素早さよ。
会話する隙がない。


伝票の書き方とメニューを見ながら考える。
おばちゃんの機敏な動きは忙しいからかもしれない。
伝票には手間を省く意味合いもあるはずだ。
間違えてはいけないわ。

とり皿は30円


有料追加欄の「紙エープロン」。
のびないところをのばしたり、ジがヅになったりはよくある。
エプロンは備品じゃないのかという疑問はさておき、
粉なのに個で数える「チーズ粉」もまあいいとして、
「とり皿1~2個」よ。個数は定まらず。
洗う時の水道代とか洗剤代とかそういうのかしら。

肉、野菜、いろいろ


どのメニューにも「旨辛味」か「超美味」、もしくは「一番星」
「いつでも人気」「超おすすめ」と書いてある。
どれも食べたいし、もう、どれでもいい。なんだこの気持ち。

もたもたしているとおばちゃんがやってきて
「スープ」と紙コップを置く。
そして無記入の伝票を一瞥し、「書いたら呼んで」とまた去って行った。


通常より小さい紙コップのサイズといい、スープの量といい、
年に一回のアレを思い出すわ。食事時なのに。
のちに何のスープか聞くと
「ん、肉とか野菜とか、いろいろ」だそうだ。
サムゲタンの鶏スープをかなり濃くした味わいで塩味強め。
何か具材を加えたらさらにおいしいんだろうな。

3度目のおばちゃんに一番早いメニューを尋ね、
ビビンバ定食(700円)にマルをした。
隣でおばちゃんが「ごはんの量は?」「ほかはいい?」と聞き、
指さすところに記入する。
伝票制にする意義がわからなくなってきたよ。

ジャンはジャンよ


5分かからないくらいでビビンバが出てきた。
「味ついてないから醤(ジャン)かけて」
が早口すぎて聞き逃してしまい、「え?」と返したら
「ジャンかけて、味ついてないから」
「ジャン、そこのジャン」と連呼。大切なんだな。

このジャンがいい。
甘みがまろやかで少しピリッとしていて
ビビンバのナムルや肉をうまーく包み込む。
具材に干し椎茸や水菜もあり、旨みが和音。


最初に真ん中をかき混ぜて、しばらくして鍋肌から返すと
お焦げができておすすめ。

伝票は効率化に役立つのか問題

ちなみにおばちゃんは、後から来店した女性客には
「注文決まったら教えて」と伝え、自ら伝票に書き込んでいた。

伝票制は本当に必要なのか。
14時を過ぎてちょっと手が空いたからなのか。
お客が伝票を書くことで
おばちゃんがどのくらい楽になっているのかはわからない。

まかないのごはんで口をもぐもぐさせながら
お客に「ごはんは?ふちゅう?」と聞くおばちゃんが
「普通」をかんでしまったのか、
本当は「中」と言いたかったのかもよくわからない。

ただ、次はランチタイムど真ん中に行ってみることにした。

2日後に再び店へ

12時半でテーブル席は満席、カウンターは2席のみ空いている。
カウンター上部に設置された伝票とペンをつかんで座り、
流れるように記入しておばちゃんに渡すと、
「鶏チゲで、ごはんは小ね。チーズ粉つける?」

無表情だし、言葉はつっけんどんに聞こえるけど丁寧なのだ。
もはやどっちが記入しても時間はたいして変わらない。
伝票を使ったコミュニケーションなのかしら。
とすら思えてくる。


ちなみに、チーズ粉は確かに1個だった。

おまえさん、なんでそこにいるんだい


鶏肉キムチチゲ定食(700円)。
ダシダや甘辛い味噌で味付けし、
鶏のだしが溶け込んだスープは
少しとろっとしている。
豆腐もたっぷり入って、スンドゥブのよう。
ただ、とにかく熱くて食べ進められない。
ぐつぐつしすぎて具材が鍋の中で泳いでいる。

深さのないスプーンでじわじわすすっていると、
おばちゃんがごはんを持ってきてくれた。
「これ小だけど、これでいい?」
やっぱり丁寧だ。

そして少し冷めた頃、出てきた。


トック(韓国の餅)とポテトが。
鶏肉とか豆腐とか、それなりに量のある他の具材とは違い、
ポテトは1個だけ。存在感はあるが特別感はない。
なんでここに来ちゃったの?
ポテトがかわいく思えてきた。

鍋に水をザバッと

隣の女性はすき焼き風のチムタック定食らしい。
同じように沸騰してスープが渦巻いている。
と、そこにすぐさま紙コップスープをザバッと入れ、
水さしの水をジャバジャバと注いでいた。
食べ物に水を足すったい。
足していいったい。

帰りがけ、おばちゃんがスタンプカードをくれた。
2回分のシールを添えて。


こんなシール、あるったい。

奥永智絵

ライター・エディター

福岡市で活動するライター・エディター。県内60店以上でカレーを食し、出張となればカレー屋を探し、ふつか酔いにも風邪にもカレーが効くと信じている。ほとんど毎晩飲んで過ごし、心惹かれるつまみは炙りもの、燻しもの、漬物。

■店舗情報

店名 辛世界の真豚奈
ジャンル 韓国料理
TEL 092-791-8011
住所 福岡市中央区天神3-16-18 大産天神ビル2階
交通手段 地下鉄天神駅から徒歩3分
営業時間 11:30~15:00、17:30~23:00
定休日 なし

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